反宇宙論では様々な問題を抱えるこの世界を「悪の宇宙」であると考えます。
グノーシス主義における反宇宙的とは悪に満ちたこの世界を受け入れない、認めない思想・立場のことです。
迷妄や希望的観測を排除して世界を眺めると、悪に満ちた絶望的な現実を見ることができます。
この宇宙は善ではなく悪に他ならないと考えるのが、グノーシス主義の反宇宙論です。
現在人間が生きている世界は悪の宇宙ですが、原初には真の至高神が創造した善の宇宙があったと考えます。
原初の世界は至高神が創造した充溢(プレーローマ)の世界ですが、至高神の神性(アイオーン)の1つであるソフィア(知恵)はヤルダバオートもしくはデミウルゴスと呼ばれる狂神を生み出します。
ヤルダバオートは「偽の神」の固有名です。
デミウルゴスはプラトンの「ティマイオス」に世界の創造者として登場しますが、グノーシス主義に援用されました。
旧約聖書の神であるヤハウェはグノーシス主義ではデミウルゴスとされ、固有名でヤルダバオートと呼ばれます。
ヤルダバオートは旧約聖書において悪い行いや傲慢さを誇示しており「偽の神」、「下級神」であるとされました。
グノーシス主義では愚劣な下級神がアルコーンとされ、ヤルダバオート(デミウルゴス)が第一のアルコーンと呼ばれています。
デミウルゴスは他にも多数のアルコーンを生み出しました。アルコーンは地上の支配者です。
人間の苦しみの原因である肉体や心魂はデミウルゴスが創造したものとされます。
そのため人間は肉体や心魂があるコーンの支配下にあります。
人間がデミウルゴスや様々なアルコーンに優越するためには霊が重要です。
グノーシス主義では霊が救済の根拠とされています。
つまり肉体と霊、悪と善の二元論です。
グノーシス主義の神話ではデミウルゴスが水に映った至高神を自分自身と錯覚して人間を創造したとされます。
「至高なる者」とはソピアーもしくはアイオーンの像のことです。
ソピアー(ソフィア)は古代ギリシャ語で「知恵」や「叡智」を表します。
古代ヘレニズム世界では智慧を象徴する女神とされました。
グノーシス主義やユダヤ教などではアイオーンという名前で世界の起源と関わります。
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