特にキャリー・イェール版とブレラ・ブランビラ版、ピアポント・モルガン・ベルガモ版は三大コレクションと呼ばれます。
・キャリー・イェール版とは
このコレクションはヴィスコンティ・ディ・モドローネ版としても知られており1466年に遡るとされます。
フィリッポ・マリア・ヴィスコンティの注文によるセットではないかとする学説によると、このデッキが世界最古である可能性が存在します。
ジョルダーノ・ベルティという学者は、このデッキが1442年から1447年の間に製作されたという学説を主張しています。
キャリー・イェール版には一般的な大アルカナだけでなく信仰や希望、慈善のカードが存在します。
これらのカードは教皇と星、女教皇の代わりに加えられたとする説もあります。
一般的なタロットカードの人物札は王と女王、騎士とペイジです。
ペイジとは西洋における小姓を意味します。
中世ヨーロッパでは騎士の城や屋敷に7歳から10代半ばまでの少年が小姓として仕えていました。
キャリー・イェール版には王などの他にも女騎士やメイドが加えられています。
現存するのは11枚の大アルカナと17枚の人物札、金貨の3を除く数札39枚の合計67枚です。
制作当時は86枚で構成されていたと考えられています。
カードのサイズは縦が189mmで横が90mmです。
大アルカナと人物札の背景は金箔で装飾されており、数札の背景は銀で装飾されています。
イェール大学にはキャリー・イェール版の他にも1450年頃のデッキが所蔵されています。
このデッキは剣が王・女王・騎士、棒が王・騎士・ペイジ、金貨は王のみ、カップは女王のみ、その他に魔術師と教皇、節制、星、月、太陽、世界、愚者の合計16枚が現存します。
これらはヴィスコンティ・スフォルツァ版ではなくエステ家のタロットです。
・ブレラ・ブランビラ版
ブレラ・ブランビラ版の名称は1909年にイタリアのヴェネツィアでデッキを取得したジョヴァンニ・ブランビラに由来します。
1971年にはミラノにあるブレラ美術館の目録に記載されていました。
ブレラ・ブランビラ版は1463年にフランチェスコ・スフォルツァ の注文を受けてボニファチオ・ベンボが図柄を描きました。
現在は48枚が現存しています。
現存するカードのうち大アルカナは皇帝と運命の輪の2枚のみです。
カードのサイズは縦が180mmで横が90mmとなっています。
大アルカナと人物札は全て背景が金箔で装飾されました。
数札は全て背景が銀で装飾されています。
現存しているのは金貨の4以外の全ての数札に加えて杯の騎士とペイジ、棒の女王と騎士、ペイジです。
・ブレラ美術館について
ブレラ美術館はイタリアのミラノにありブレラ絵画館と呼ばれることもあります。
15世紀から18世紀のヴェネツィア派、ロンバルディア派などイタリア絵画の名作が数多く収蔵されています。
もともとは17世紀に建てられたイエズス会の施設でしたが、1772年にロンバルディア王を兼任していたマリア・テレジアが取得しました。
さらに1776年には美術アカデミーが設置され絵画の収集が行われるようになります。
後にナポレオンによって美術館として整備されました。
1809年にナポレオンの誕生日を記念して開館し、一般公開されるようになります。1882年には国立美術館になっています。
ブレラ美術館にあるブレラ宮には1764年に開設されたブレラ天文台があります。
ブレラ天文台では19世紀末から20世紀初頭のおよそ40年にわたってジョヴァンニ・スキアパレッリが天文台長を務めていました。
ジョヴァンニ・スキアパレッリは火星の運河を発見したことで知られています。
天文台では現在、天体望遠鏡などの歴史的資料が一般公開中です。さらに天文台の横には1774年に開設されたブレラ植物園も存在します。
ピアポント・モルガン・ベルガモ版にはコッレオーニ・バリオーニ版やフランチェスコ・スフォルツァ版という別名があります。
ピアポント・モルガン・ベルガモ版のデッキは1451年頃に制作されました。
最初は78枚で構成されていたと考えられますが現在は20枚の大アルカナと15枚の人物札、39枚の数札を合わせて74枚が残っています。
現存するデッキのうち35枚はモルガン・ライブラリーの所蔵です。
また26枚をアッカデミア・カッラーラ美術館が、13枚はベルガモ地方のコッレオーニ家が個人所蔵しています。
ピアポント・モルガン・ベルガモ版は大アルカナの悪魔と塔のカードが現存していません。
大アルカナと人物札は背景に金箔が使われています。
数札の背景はクリーム色で花と蔓のモチーフによる装飾が見られます。全てのカードには青い縁取り装飾が存在します。
カードのサイズは縦が173mmで横が87mmです。
・モルガン・ライブラリーとは
モルガン・ライブラリーはニューヨーク市マンハッタン区マーリー・ヒルにある美術館と学術機関です。
実業家でアメリカ五代財閥の1つであるモルガン財閥を創設したジョン・モルガンの書物と絵画のコレクションを集めた図書館として1906年に開設されました。
1924年には息子のJ.P.モルガン Jr.が公共法人化し、美術館として一般公開しています。
建物は120万ドルでチャールズ・マッキムによって設計されたものです。
1966年にニューヨーク市指定歴史建造物に指定され、さらにアメリカ合衆国国定歴史建造物に認定されています。
展示品は書物や著名人の自筆書類が多く見られます。
ウォルター・スコットやバルザック、ディケンズやシャーロット・ブロンテなどの草稿の他にベートーヴェンやモーツァルトの楽譜などが展示されています。
・アッカデミア・カッラーラ美術館とは
アッカデミア・カッラーラ美術館はイタリアのベルガモ地方にある美術館・美術学校です。
18世紀の終わりに芸術活動のパトロンで美術品収集家でもあったジャコモ・カッラーラ伯爵のコレクションがベルガモ市への遺産とされました。
伯爵は1796年に死去し美術品と美術館は代理人によって管理されていましたが、1958年以降はベルガモのコムーネが直接監督しています。
コムーネとはイタリア語で「共同体」という意味です。現代ではイタリアの基礎自治体を指します。
イタリアの自治体には日本における市町村のような人口規模による区別はありません。
人口が100万人を超える大都市も1000人以下の村も全てコムーネです。
日本語に翻訳する際には日本の自治体規模に対応させて市町村で表現します。
アッカデミア・カッラーラ美術館の新古典主義の建物は建築家レオポルド・ポラックの弟子であるシモーネ・エリアが設計し、1810年に竣工しました。
アルトベロ・メローネが描いたチェーザレ・ボルジアの肖像画もこの美術館が収蔵しています。
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