マルセイユ版タロットとは

マルセイユ版タロットカードは16世紀から18世紀にかけてヨーロッパで大量生産されていました。

当時カードの一大生産地であったマルセイユの名が付けられています。

一般的にはグリモー版のことをマルセイユ版と呼ぶケースが多く見られます。

同時期のタロットカードには1557年にリヨンで作られたケイトリン・ジョフロイ版も存在します。

しかし大アルカナの図柄にマルセイユ版とは大きな違いがあるため、マルセイユ版の元祖ではありません。

現在使用されているマルセイユ版と同様の図柄は1650年頃のパリで作られていたジャン・ノブレ版が最初です。

ジャン・ノブレ版はマルセイユ版の元祖とされています。

イギリスの哲学者であるマイケル・ダメットによると、18世紀前半に占いの方法を記載した手書きの書類が最古のタロット占いの記録です。

この記録によると各カードには意味が割り振られていました。

また当時は主にゲーム用として使用されていたようです。

マルセイユ版はライダー(ウェイト・スミス)版と並んで広く普及しています。

ウェイト版とは大アルカナの配列順序に違いがあります。

マルセイユ版の8は正義で11は力です。

一方でウェイト版の8は力で11は正義となっています。

・様々なマルセイユ版タロット

Ancien Tarot de Marseille

Ancien Tarot de Marseilleはグリモー版とも呼ばれています。

バプティスト・ポール・グリモーが1848年に設立したフランス・カルタ社が、1930年代に制作したタロットカードです。

グリモー版はニコラ・コンヴェル版のデザインを現代風にアレンジしています。

名称はバプティスト・ポール・グリモーに由来しており、一般的にマルセイユ版とも呼ばれます。

Universal Tarot of Marseille

Universal Tarot of MarseilleはイタリアのLO SCARABEO社が制作したタロットカードです。

クラウド・バーデルのデザインを現代風にアレンジされてUniversal Tarot of Marseilleとして復刻されました。

クラウド・バーテル版とも呼ばれています。

Tarot Classic

Tarot Classicは1751年にクラウド・バーデルによって制作された木版タロットカードを復刻したものです。

スイスのAGM社やイタリアのLO SCARABEO社によって復刻されています。

Tarot Vieville

Tarot Vievilleは1651年ころのパリでジャック・ヴィエヴィルによって制作された木版タロットカードを復刻したものです。

ジャック・ヴィエヴィル版とも呼ばれています。

マルセイユ版の元祖とされるジャン・ノブレ版と同時期に制作されました。

Ancient Tarots of Marseilles

Ancient Tarots of Marseillesはニコラ・コンヴェル版とも呼ばれています。

15世紀のマルセイユ版タロットに基づいて1760年にニコラ・コンヴェルが木版タロットカードを制作し、翌年に出版しました。

世界的なカードメーカーであるフランス・カルタ社の子会社であるヘロン社が復刻版を制作しています。

ニコラ・コンヴェルは1760年にマルセイユでタロットカードの印刷所を設立しました。

印刷所はジャン・バティスタ・カモワンがコンヴェル家の娘と結婚したためカモワン家に引き継がれています。

ニコラ・コンヴェル版の版木はカモワン社が所有しており、カモワン社は後にカモワン・タロットを制作しました。

ジャン・ドーダル版

ジャン・ドーダル版は1701年頃にリヨンで制作された、マルセイユ版タロットの一種で大アルカナ22枚と小アルカナ56枚で構成されています。

・マルセイユ版タロットの断絶

ニコラ・コンヴェルがマルセイユで自ら制作した版木を使用してタロットカードの印刷を始めたのが1760年です。

当時のマルセイユはカードの一大生産地でした。

ニコラ・コンヴェル版の版木には梨の木が使用されており、ステンシルを使って緑や水色を含む様々な色で彩色されているという特徴があります。

ステンシルとは型染めのことです。

型紙の模様を切り抜いた部分に染料や絵の具を刷り込む染色や版画の技法を指します。

初歩的な技法ですがデザインや版画、フランスなどにおける美術印刷では今でもステンシルが採用されています。

現代では謄写版用の原紙や捺染印刷用の型紙をステンシルと呼びます。

ニコラ・コンヴェル版は1860年頃まで同じ版木と色彩で印刷され続けました。

1861年にカモワン家のジャン・バティスタ・カモワンが、ニコラ・コンヴェルの子孫である女性と結婚してカード・メーカーであるコンヴェル家を継承します。

ジャン・バティスタ・カモワンがコンヴェル家を継承した当時、マルセイユにおけるカード・メーカーは2件のみとなっており、1878年にはカモワン家のみとなります。

ニコラ・コンヴェルが制作した版木は1世紀以上使い続けたために摩耗し、最初のような仕上がりにはならなくなっていました。

そこでカモワン家は4色印刷機械を導入します。

1880年に新しいタロットカードが製造されたとき色彩は4色に制限されており、赤と青、黄色と黒の他にわずか緑色のみ使うことができました。

他のメーカーもカモワン家の新しい印刷方法を模倣するようになったため、伝統的なマルセイユ版タロットが断絶してしまいます。

・カモワン・タロットとは

カモワン・タロットはフィリップ・カモワンとアレハンドロ・ホドロフスキーによって制作されました。

正式名称はカモワン・ホドロフスキー版マルセイユ・タロットです。

フィリップ・カモワンがマルセイユ版タロットを本来の形に復元するため、アレハンドロ・ホドロフスキーの協力により1997年に完成させました。

フィリップ・カモワンはニコラ・コンヴェルの子孫でマルセイユ・タロットのカード・メーカーとして現存するカモワン家の唯一の後継者です。

14歳の頃から象徴体系や錬金術、西洋秘教やチベット仏教、ヒンドゥ教などの知識を深めてきました。

数学や医学、コンピュータサイエンスの他に12か国語も学んでいます。

アレハンドロ・ホドロフスキーはチリ出身の映画監督です。

演出家や詩人、作家や俳優の他にバンド・デシネ作家など様々な顔を持っています。

さらにタロット占いの専門家でもあります。

フィリップ・カモワンとアレハンドロ・ホドロフスキーは所有している版木やニコラ・コンヴェル版、ドーダル版などの様々なマルセイユ版タロットを比較検討しました。

数年間をかけて版木の劣化で消失したシンボルや本来あったと考えられるシンボルを復元しています。

版木の劣化によって消失したシンボルは皇帝のカードに描かれていたワシの足元にある卵です。

また2人は本来であれば女法王のカードの法衣に3つ目の十字架が描かれていたと考えました。

フィリップ・カモワンは現在、自身のタロット・スクールでカモワン・タロットの使用方法を教授しています。

講義の内容にはカモワン・コードやカモワンの法則など独自のタロット解釈が含まれます。

カモワン・タロットではマルセイユ版タロットの秘密の教えに関するコードとシンボルが見直されています。

これはアレハンドロ・ホドロフスキーの勧めによるものです。

アレハンドロ・ホドロフスキーは著書「タロットの宇宙」の中で、カモワン・タロットを使用した大アルカナと小アルカナの解釈や合計21になるペアの解釈、独自の3次元タロット・マンダラなどについて説明しています。

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