
本名はアルフォンス・ルイ・コンスタンです。41歳のときにヘブライ語風のエリファス・レヴィに改名しています。
19世紀のロマン主義文学の中にフランスやドイツ、イギリスで小ロマン派と呼ばれる一派が存在しました。
エリファス・レヴィは当初小ロマン派の文芸サロンと関わっていましたが後にカバラや錬金術、キリスト教神秘主義などの研究を行うようになります。
近代ヨーロッパにおける魔術復興の象徴的な存在です。
エリファス・レヴィは魔術を理性に基づく合理的な科学であると主張しました。
古代の密儀やタロット、儀式魔術などを1体系の魔術として統括しようとします。
1854年に発表した「高等魔術の教理と祭儀」に書かれたオカルティズムに基づく神秘思想は当時のパリの人々に大きな影響を与えます。
19世紀半ばから20世紀までの魔術復興とオカルト思想を象徴する存在となりました。
「高等魔術の教理と祭儀」にはタロットカードの解説も含まれています。
同書は現代まで世界中でタロット解釈解説書の定番とされてきました。
エリファス・レヴィの影響を受けてタロットカードにもカバラ思想や神秘主義に基づく解釈が採り入れられるようになります。
エリファス・レヴィは同書の中で大アルカナ22枚とヘブライ語のアルファベット22文字の対応関係を主張しています。
過去に制作された様々なタロットカードも同書に基づいて解釈されるようになりました。
エリファス・レヴィはイギリスの人々にも影響を与えます。
イギリスでもタロットの神秘的解釈が行われるようになり、1910年にはアーサー・エドワード・ウェイトが黄金の夜明け団の教義に基づくカバラ思想・神秘的象徴を採り入れた「ウェイト版タロット」を制作しました。
ウェイト版タロットが出版されると、世界中で同様に神秘的解釈を採り入れたタロットカードが制作されるようになります。
・オカルティズムについて
オカルティズムはオカルト主義、神秘学、隠秘学や玄秘学などと呼ばれます。
本来は占星術や錬金術、魔術などの実践を指します。
一般的に近代における西洋の神秘思想や、フリーメイソンのような秘密結社における教義や世界観の実践などに適用されます。
・カバラとは
カバラはユダヤ教の伝統に基づく神秘主義思想です。
ユダヤ・カバラとクリスチャン・カバラに分類することができます。
もともとはユダヤ教徒が旧約聖書の解釈に利用していました。
ゲオーニーム時代には口伝律法を指す言葉として用いられていたこともあります。
タルムードが完成した後の6世紀から11世紀において、バビロニア地方のユダヤ人コミュニティと学塾(イェシーバー)におけるイェシーバー長の称号がゲオーニームです。
ゲオーニームは6世紀から11世紀におけるユダヤ教徒の指導者でした。
ユダヤ教において神がモーセに与えた書かれた律法をトーラーと呼びます。
一方で口伝で語り継ぐべきものとして与えられたとされるのが口伝律法(口伝のトーラー)です。
口伝律法を収めた文書群がタルムードと呼ばれます。
タルムードは多くのユダヤ教教派において聖典とされており、ユダヤ教徒の生活と信仰の基となっています。
英語に翻訳されたエルサレム・タルムードなども存在しますが、ヘブライ語のバビロニア・タルムードだけが聖典とされます。
本来カバラは律法の遵守や真意を学ぶことを目的としており秘教的な神秘思想ではありませんでした。
しかしキリスト教徒の神秘主義者によって個人的な神秘体験の追究手段となります。

3世紀から6世紀頃に体系化され始め、16世紀頃にほぼ現在の体系が完成したとされています。
アブラハムはユダヤ人の祖先です。
メルキゼデクは旧約聖書の創世記14章に登場し、いと高き神の司祭でサレムの王とされています。
アブラハムがエラム王と盟友の連合軍に勝利してソドムの捕虜と財産、甥のロトを救出して帰還した際に、祝福するためメルキゼデクがパンとぶどう酒を持って現れました。
クリスチャン・カバラはユダヤ・カバラをキリスト教に応用するために考案されたものです。
後に近代西洋魔術の論理的根拠として利用されるようになります。
主に生命の樹(セフィロト)を中心として理論が成り立っています。
カバラによると世界の創造は神エイン・ソフからの聖性の流出過程とされます。
聖性は10段階にわたって流出し、最終的に物質世界が形成されることになります。
流出過程は10個の球と22本の小径で構成される生命の樹によって示されます。
生命の樹の各部分には神の属性が反映されています。
ユダヤ教は一神教ですがカバラには多神教や汎神論に近い性質があります。
タロットとカバラはエリファス・レヴィによって結びつけられました。
両者が共通しているのはタロットの大アルカナが22枚あり、ヘブライ語のアルファベットも22文字あるという点のみです。
カバラには形成の書と呼ばれる文献が存在し、10のセフィラと22の小径の占星術配属が記載されています。
形成の書から影響を受けたエリファス・レヴィがタロットに占星術配属を応用し、タロット魔術が生まれました。
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