フランスとタロットカード

1392年にシャルル6世のタロットが制作されてから、90年が経過した1482年頃にはフランスの文献などの中にタロットを含むプレイングカードに関する記述が見られるようになります。

タロットカードに関する文献としてフランスで最も古いものは、1534年に出版されたフランソワ・ラブレーの著書「ガルガンチュワとパンタグリュエル」です。

この本の中の第一之書には「tarau」という記述が見られます。

フランソワ・ラブレーはフランスのルネサンス期を代表する人文主義者で、作家や医師でもあります。

古代ギリシャの医者であるヒポクラテスの医書を研究したことで有名となりました。

中世の巨人伝説を題材にした騎士物語のパロディである「ガルガンチュワ物語」と「ガルガンチュワとパンタグリュエル」を書いています。

これらの物語はパリ大学や教会などの権威を風刺していたため禁書とされました。

パリ大学は1257年にフランスの神学者 ロベール・ド・ソルボンが神学部学生用のソルボンヌ寮を設立して以来、ソルボンヌもしくはラ・ソルボンヌとも呼ばれます。

12世紀前半に起源があり、1970年に第1から第13までの独立した大学群に編成されています。

ただし必ずしもソルボンの思想に基づいた教育が行われているわけではありません。

例えば第5大学の別名は「ルネ・デカルト大学」です。

現在存在する13校のうち第1から第4大学までがソルボンの意思を受け継ぐ教育を行っています。

第1大学の別名は「パンテオン・ソルボンヌ大学」で第3大学は「ソルボンヌ・ヌーベル大学」、第4大学は「ソルボンヌ大学」です。

基本的にソルボンヌ大学と言う場合は第4大学を指します。

16世紀後半にはリヨンやルーアンなどでもタロットが製造されるようになります。

17世紀にはマルセイユだけでなくトゥーロンやボルドーなど地中海沿岸地域やフランス各地でカードが製造されるようになりました。

当時の地中海沿岸は港町として栄えており、最新の技術や情報が各地から集まる地域です。

アジアやアフリカなどの文化を素早く吸収できたので、木版・銅板印刷の技術もハイレベルでした。

・ケイトリン・ジョフロイ版について

ケイトリン・ジョフロイ版タロットはフランスで現存する最古のタロットカードとされています。

1557年にリヨンでケイトリン・ジョフロイによって制作されました。

このタロットのスートは現代のものとは大きく異なります。

当時のトランプのスートと共通する3種類が存在し、マルセイユ版との共通点はあまりありません。

・ジャン・ノブレ版について

マルセイユ版タロットと同じ絵柄を確認できる最も古いものは、1650年頃のパリで制作されたジャン・ノブレ版です。

ジャン・ノブレ版のデザインが一般化して、様々なバリエーションのタロットカードがフランス各地で生産されるようになりました。

一般的にマルセイユ版と呼ばれるようになるのは20世紀に入ってからです。

グリモー社がニコラ・コンヴェル版を「マルセイユのタロット」という名称で1930年代に復刻したことをきっかけとして、広くマルセイユ版と呼ばれるようになります。

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