
エッティラは1738年3月1日にフランスのパリで生まれました。
一般的に知られるエッティラ(Etteilla)という名前は、本名のアリエット(Alliette)のアルファベットを反対にしたものです。
タロットカードを使用する世界で最初の職業占い師として有名です。
クール・ド・ジェプランのタロット・エジプト起源説から影響を受けて、1789年に世界で初めて占い専用のタロットカードを出版します。

1781年に「原始世界(Monde Primiif)第8巻」を出版しました。
この本の中でジェプランはタロットカードが古代エジプトの「トート書」の名残であると主張します。
かなりいい加減な説でしたがエッティラはこの説から大きな影響を受け、1791年に「トートの書の理論と実践」を出版してジェプランのエジプト起源説を補います。
この当時はヨーロッパで古代エジプトが流行しており、珍説が急速に普及しました。
1783年にエッティラは「タロットと呼ばれるカード遊びの楽しみ方(Maniere de se recreer avec le jeu de cartes nommees tarots)」という4分冊の本を出版します。
「タロットと呼ばれるカード遊びの楽しみ方」はタロット占いを中心的な内容とする世界最初の本です。
エッティラのタロットは古代エジプトの賢者ヘルメス・トリスメギストスの教えに基づいており、絵柄など一般的なものとはかなり異なります。フランスのグリモー社が復刻したものが有名です。
1791年にエッティラが亡くなってから8年後の1799年、エジプトのロゼッタでロゼッタ・ストーンが発見されます。
ロゼッタ・ストーンは紀元前196年にプトレマイオス5世によってメンフィスで出された勅令が刻まれた石碑の一部です。
古代エジプト語の神聖文字(ヒエログリフ)と民衆文字(デモティック)、ギリシア文字で記されています。

エッティラが主張したタロット・エジプト起源説は否定されましたが、エッティラ版タロットの理論書である「タロットと呼ばれるカード遊びの楽しみ方」は後世に大きな影響を残しています。
現在まで続くタロット占いやカード占いの基礎を築いただけでなく、タロットカードと占星術を世界で初めて結びつけました。
エリファス・レヴィはエッティラの説を批判していますが、タロットと魔術を結びつけた業績については認めています。
・エッティラ版タロットについて
エッティラ版タロットは古代エジプトの賢者ヘルメス・トリスメギストスの教えなどに基づいて制作されているため、マルセイユ版とは大きな違いがあります。
例えばマルセイユ版で0番とされる「愚者」はエッティラ版では78番です。
マルセイユ版では5番の「教皇」はエッティラ版では「男性の質問者」とされています。
大アルカナのタイトルはマルセイユ版とかなり異なります。
エッティラによると2番から7番までの大アルカナの順番は世界の創造を表しており、8番は創造後の休息です。
旧約聖書にある世界創造の物語も採り入れられました。エッティラ版8番の「女性の質問者」はマルセイユ版の2番である「女教皇」に対応しています。
9番から12番までは4つの枢要徳を表します。
枢要徳とは古代ギリシャ以来のヨーロッパの中心的な徳目で四徳や四元徳とも呼ばれます。
9番は「正義」で10番が「節制」、11番が「剛毅」で12番が「賢明」です。
マルセイユ版では8番の「正義」と14番の「節制」、11番の「力」と12番の「吊るされた人」に対応しています。
マルセイユ版で12番の「吊るされた人」はクール・ド・ジェブランのタロット・エジプト起源説によれば当時のカード職人によって間違って描かれたとされます。
クール・ド・ジェブランは本来「吊るされた人」は「賢明」を表しており、逆さまの人物ではなく片足立ちだったと主張しています。
そのためエッティラ版では「吊るされた人」が「賢明」になりました。
マルセイユ版2番の「女教皇」はエッティラ版では8番の「女性の質問者」となっており、図柄はエヴァが描かれています。
これはエッティラがヘルメス哲学や錬金術と旧約聖書の世界創造を結びつけたためです。
エッティラ版の1番から12番までは、占星術の12サインが白羊宮から双魚宮まで当てはめられました。
12サインとは西洋占星術で使用される黄道を30度ずつ分割した十二星座のシンボルのことです。
また2番から5番までのカードには四元素である火・水・空気・土を対応させています。
さら逆位置の解読法を最初に採用したのがエッティラ版タロットです。
エッティラ版タロットは神秘主義的なタロットカードの元祖となり一時期マルセイユ版を隅に追いやって主流となったこともありました。
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