セレマは「汝の意志することを行え」という規則に基づく一種の宗教で哲学でもあります。
イギリスのオカルティストで登山家でもあったアレイスター・クロウリー(1875年10月12日~1947年12月1日)が、著書の「法の書」を聖典として宗教・哲学であるセレマを提唱しました。
セレマとは古代ギリシャ語のコイネーであるテレーマをラテン文字に転写したものです。
テレーマには「意志」という意味があります。
初期のキリスト教における書物では神や悪魔、人間の意志として使用されています。
フランス語ではテレームになります。
16世紀のフランスにおけるルネサンスを代表する人文主義者で作家だったフランソワ・ラブレーは、著書の「ガルガンチュワとパンタグリュエル」の中で架空の僧院の名称としてテレームを使っています。
第一之書である「ガルガンチュワ物語」は1534年もしくは1535年に出版されました。
巨人パンタグリュエルの父であるガルガンチュアワの生涯を描いています。
物語はガルガンチュアの出生と少年時代から始まります。
ガルガンチュワは隣国の暴君であるピクロコール王との間で戦争となりますが、修道士ジャンの活躍により勝利します。
テレームの僧院はジャンの希望によって建てられます。
僧院には教養のある男女のみが入ることができ、唯一の規律は「汝の欲するところを行え」でした。
「ガルガンチュワとパンタグリュエル」は巨人一族を巡る物語です。
中世の巨人伝説を題材とした騎士道物語のパロディで、パリ大学や教会など既成の権威を風刺する内容を含んでいたため禁書となっています。
テレームの僧院は現実の修道院を風刺するものです。
18世紀になるとイギリスのフランシス・ダッシュウッド男爵(1708年12月~1781年12月11日)が秘密結社「地獄の火クラブ」を結成します。
フランシス・ダッシュウッド男爵はバッキンガムシャー州の裕福な名門貴族で、1753年に黒ミサを行う地獄の火クラブを結成しました。
クラブは1762年に大蔵大臣に指名されるまで存続しています。
バッキンガムシャー州のマーローにあるメドメナムには1201年に建てられたシトー会の修道院がありました。
修道院はフランシス・ダッシュウッドから名前を取ったフラシアン(地獄の火クラブ)と呼ばれるクラブの集会所として利用され悪評が立ちます。
クラブの信条である「汝の意志することを行え」は、ガルガンチュワ物語に登場するテレームの僧院を真似て修道院の入り口に刻まれました。
さらに「汝の意志することを行え」という規則は20世紀にアレイスター・クロウリーが「法の書」で使用しています。
「法の書」はアレイスター・クロウリーが1904年に出版したセレマの聖典の通称です。
正式には「エルの書」もしくは「二百二十の書」と表記されます。
この本には1904年4月8日から4月10日にかけてクロウリーがエジプトのカイロでアイワスから受信したメッセージが記されています。
アイワスはクロウリーに「法の書」を伝えた知性体で、クロウリーは後にアイワスを自分の聖守護天使と見なすようになります。
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